営業再開した「TAOYA和倉」がつなぐ能登・和倉温泉の未来。精一杯のおもてなしで、"また来たい"をつくる【楽天トラベル】

公開日: 2025/05/19

2024年1月1日、石川県・能登半島を中心に発生した能登半島地震。復興はまだ道半ばで、能登の人気温泉地である和倉温泉の旅館は、21軒のうち5軒しか営業を再開できていないのが現状です（2025年4月時点）。

そんな中、和倉温泉の復興ののろしを上げるように、2025年4月12日にリブランドオープンしたのが大江戸温泉物語ホテルズ＆リゾーツ株式会社が運営する温泉リゾートホテル「TAOYA和倉」。インフィニティ温泉や全室オーシャンビューの客室など、新たな魅力とともに再スタートを切りました。そんなTAOYA和倉の支配人・竹内一雄さんに、震災当時の状況や地域復興への想いを聞きました。

「TAOYA和倉」の詳細・宿泊予約

自慢の露天風呂が崩壊。2024年1月1日に起こったこと

TAOYA和倉の前身「湯快リゾートプレミアム金波荘」は、和倉温泉で10年以上営業を続けてきた老舗旅館。地震によって建物には亀裂が走り、ライフラインは遮断されて休業を余儀なくされました。

竹内さん：「地震が発生した元旦は1番の繁忙期で、400名以上が宿泊される予定でした。多くのお客様がチェックインをしている16:10頃に震度7の揺れが発生したのです。皆さまがしゃがみこむ大きな揺れでした」

地震発生から館内に緊急放送を流し、宿泊者を外へと誘導。その後、津波警報が発令されたため高台の小学校へ避難させました。年2回の避難訓練と、緊急連絡のレポートラインを明確化していたことで、宿泊客やスタッフが誰もけがなく避難できたと、竹内さんは振り返ります。

竹内さん：「自ら動き、お客様を率先して誘導してくれたスタッフに助けられました。スタッフの多くは地元の出身で、いち早く家族がいる自宅へ駆けつけたいはずなのに、お客様優先で対応してくれました」

建物は全3棟あったものの、1棟は損傷が激しく取り壊さざるを得ない状態に。そこには金波荘自慢の露天風呂やプールがあり、失ってしまったことは竹内さんにとって大きな心残りとなりました。

竹内さん：「私は金波荘の支配人に2018年と2022年に着任していましたので、人一倍この宿に思い入れがあります。2度目の着任から約2年が経った頃に地震が発生し、露天風呂の3割が流され、プールには亀裂が走りました。現在は駐車場に形を変えましたが、自慢の露天風呂がなくなってしまったのが本当に辛かったですね」

復活を願う人々の協力で、わずか1年での営業再開

金波荘は再オープンの計画を立てるにあたり、海沿いの美しい立地からオールインクルーシブでゆったり過ごす温泉リゾートホテルの「TAOYA」へとリブランドすることが決定。震災後、約半年は水も出なかった状況ながら和倉温泉の復興への想いを胸に、可能な限り早いオープンを目指したそうです。

竹内さん：「洗面所、トイレ、お風呂。そういった水回りが使用できなかったことが大変でした。水道の復旧後、2024年夏頃から工事がはじまり、1年経たないうちに再オープンできたのは、工事業者や地域のみなさんのおかげです。現在、和倉温泉で旅館を営業しているのは、当館を含めて5軒（2025年4月時点）で、約200人が宿泊できる大型ホテルは当館のみ。数年はがかかると思っていたので、本当に感謝しています」

宿泊客をもてなすスタッフの多くは、以前から金波荘で働いていた人たち。宿の再開は、雇用の面でも地域復興につながっています。

竹内さん：「雇用維持が課題でしたが、約7割のスタッフがリブランドオープンに合わせて戻ってきてくれました。まだ再開できていない周辺の宿で働いていた方々も応募してくれたので、採用しています」

能登の海へとつながる温泉をリニューアル！「TAOYA和倉」の魅⼒とは？

2025年4月12日、再開業日には全101室が満室。翌日も全国各地から訪れた宿泊者で埋まり、ホテルでの滞在を楽しみました。それは多くの人が和倉温泉の復興を待ち望んでいたことの表れでもありました。

竹内さん：「TAOYAは『ゆったりと、たおやかに。』をブランドコンセプトとする、落ち着いた大人のための空間です。オールインクルーシブで、チェックイン後は海を見ながらお酒を片手にゆったりと過ごしていただけます。夜は照明を落とし、バーのような雰囲気に。特に夕食のバイキングでは石川県の地酒を数多くそろえていて、利き酒をするように味わうことも可能です」

リブランドにあたってインフィニティ温泉をリニューアル。温泉から能登の海まで、どこまでも続くような空間で心ゆくまでリラックスできます。

竹内さん：「金波荘の露天風呂も自慢でしたが、さらに進化させてお客様に満足していただけるような空間にしました。オーシャンビューのサウナと岩盤浴も新設しています」

全室オーシャンビューである点もTAOYA和倉の魅力。リニューアルされた客室は居心地がよく、和ベッドルームや和洋室などニーズに合わせて多様な客室タイプから選択できます。美しい海をプライベートな湯船で望める露天風呂付きの客室も、和洋室・和室・洋室から選べます。

部屋一覧

食事では能登の食材を生かした地産地消のバイキングメニューを満喫。夕食は「能登産ブリたたき握り」や「輪島産フグ握り」など海に面したTAOYA和倉ならではの海鮮に加え、「能登牛コロッケ」や「サーロインステーキ金時草のソース」といった豪華な肉料理も楽しめます。

夕食の料理数は約80種類。どれを食べるか迷ってしまうほど、バラエティに富んだ料理が並んでいます。

竹内さん：「地元の海鮮、そして石川と言ったらみなさんが思い浮かべる『のどぐろ』など、海の幸を使った料理はぜひ食べていただきたいです。器にもこだわり、石川の伝統工芸である九谷焼を採用しています」

地元の食材は夜食にも。21:00～23:00に提供される「中島菜手延べうどんのどぐろ出汁」は、能登野菜の中島菜を使用した、翡翠（ひすい）色のご当地うどんです。

竹内さん：「バイキングメニュー、お酒、夜食などでお客様が地元の食材をおいしいと感じ、買って帰ろうかと思っていただけたらそれも地域貢献につながると考えています。例えば夜食の中島菜うどんは、道の駅などで購入できます。こういったショーケースのような役割は、宿を営業していなかったらできないことです。いち早く和倉温泉で宿をオープンしたことを私たちのミッションと考え、少しでも地域に貢献したいと思っています」

精一杯のおもてなしで、和倉温泉のためにできることを一歩ずつ

和倉温泉はまだまだ復興の最中。中には再建に向けた工事に着工できていない宿もあります。和倉温泉を歩いていると、道路や建物が震災当時のままに残されている場所もあります。完全復活までは「3～5年はかかるのではないか」と竹内さん。未曾有の事態からもう一度、温泉地として盛り上げるための火付け役としてTAOYA和倉は重要な役割を担っています。

竹内さん：「当館がオープンしたことにより、和倉温泉の旅館のみなさんの励みになっていればうれしく思います。和倉温泉旅館協同組合が中心となったサポートメンバーとも協力して、和倉温泉全体の復興に向けても注力したいです」

今後の目標は、TAOYA和倉として和倉温泉の復興のためにできることを一歩ずつ。訪れてくれた宿泊客に感謝の気持ちを込め、おもてなしをしたいと竹内さんは話します。

竹内さん：「来ていただいたお客様に、精一杯接客する。そして『また来たい』と思ってくださるようにする。それが一番だと考えています。そして当館だけではなく、能登・輪島・石川の魅力を体験し、周囲の人に話したり、SNSで発信したりしていただけると幸いですね」

能登の観光の拠点として欠かせない和倉温泉で、震災以降初の大型宿泊施設として営業を再開したTAOYA和倉。和倉温泉がかつてのにぎわいを取り戻す、その幕が上がった瞬間でした。遠方から和倉温泉へと訪れることは、能登全体の応援にもつながります。食を通して能登の魅力を知り、海へと続くようなインフィニティ温泉でリラックスする…。変わらない能登と、変わった能登を見つけに「TAOYA和倉」へと出かけてみませんか。